〜 10月のおたより 〜
目の黒いうちに目の検査を |
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読書の秋です。秋の夜長には、テレビを消して書物にじっくりと取りかかりたいもの。でも文字を追い続けると、目がかすんだり頭が痛くなったりしませんか?10月10日は目の愛護デーです。今回は、大切な目についてのお話を。
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俗にいう「目が悪くなる」とはどんな病態でしょう?屈折異常、すなわち近視、遠視や乱視のことですね。近視や遠視は、目の内側にある水晶体というレンズの厚みの調節がうまくいかず、ピントが合わない状態です。乱視は、目の表面の角膜がきれいな球体でなくなって厚みにひずみが生じた状態。多少の見えづらさならメガネなしでも良いでしょうが、問題は眼精疲労。目の焦点が合わない状態を放置すると、頭痛、肩こりや、集中力低下などを来します。遠視の子供は(近くに焦点が合わないため)本を読むのを嫌がる、ことがあるそうです。老眼なのにメガネを面倒くさがる方もいけませんね。眼科で精査して、必要ならメガネできちんと視力を矯正することが重要です。屈折異常で失明することはまずありませんが、恐いのは白内障と緑内障。
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白内障は、水晶体が白や黄色に濁ってしまう状態。メガネが黄色く汚れた状態を想像してみてください。初期であれば目薬が効果的ですが、ひどくなると手術して水晶体を交換しなければなりません。白内障の方は青が見えづらいため手術後に空を見て感動するそうです。かすみ目が長引いたり、夕方に信号が見えづらくなったらご用心。
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緑内障は放置すれば失明します。悪くなってからは治せないため、白内障よりも厄介な病態です。名前の由来は、悪化すると角膜がむくんで目が青緑色に光って見えるからだとか。目の中で産生される房水(ぼうすい)という水分が目の外に出づらくなってしまうために眼圧(目の中の水の圧力)が高くなるのが原因です。眼圧が高くなると目が腫れて痛くなり、目の奥にある視神経細胞が圧迫されて壊れてしまうのです。緑内障の初期症状は視野欠損です。気付かないうちに「見えないところ」が少しずつ広がるのです。悪くなってからの視力回復はやや困難です。初期に見つけるには眼科検診しかありません。40歳を過ぎたら眼科で視野検査を。
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目は口ほどにものを言うそうです。糖尿病や高血圧が、眼底異常により眼科で発見されることがあります。蚊が飛んでいるように見える「飛蚊症」がぶどう膜炎や網膜剥離の初期症状のこともあります。読書の合間に目が見える喜びを実感しながら、眼科疾患にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
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今回は、眼科の紹介のような話になりましたが、特に緑内障は、眼科以外でも重要な疾患です。緑内障の方が飲むと症状が悪化してしまう薬があります。病院でよく「緑内障と言われたことがありますか?」とお尋ねするのは、薬を選択するのに重要だからです。当院でも行う、胃カメラや胃のバリウム検査の前に肩に注射をしますね。この注射は麻酔ではなく、胃の動きをおさえて検査をしやすくする補助の薬で、「ブスコパン」といいます。この「ブスコパン」を緑内障の患者さんに注射すると、眼圧が上がってしまうことがあるので要注意なのです。他にも眼圧を上げてしまい、緑内障を悪くする可能性のある薬はたくさんありますので、私達医療関係者は注意を怠ってはならないのです。もしあなたが緑内障と診断されたら、眼科以外の医療機関にも必ずお知らせ下さい。よろしくお願いします。 |
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